死がふたりを分かつまで 3

前回の日記では「結局、人間というものは浮気症なのだ」という研究者の説をお話いたしました。

今日は、長年連れ添っても愛情の薄れることの無い夫婦の愛情の形についてワシントン州立大学心理学部ゴットマン博士の研究を中心に、お話したいと思います。

 

まずはゴットマン博士の実験はどのようなものであったのか、紹介いたします。

 

博士のチームは、大学内に「Love Labo」(愛の研究室)という名前の、キッチンやリビング、ベッドルーム、バス、トイレを備えたアパート型の研究施設を建設し、延べ3000組以上のカップルに普段通りの生活を数日間してもらった。

生活のすべての会話は録音され、心拍数や汗の情報も記録。そしてトイレに行くたびに、尿のサンプルが採取され各種ホルモンの値がチェックされました。

実験に参加したカップルは一回限りの参加ではなく、平均10年もの間、継続して実験に参加したそうです。

 

さて、長い間連れ添った夫婦の愛情の形です。

 

これまで男女を結びつける「恋」や「愛」というシステムを紹介してきましたが、恋や愛以外に男女をつなぎとめておく仕組みが体に備わっていないのは、現在の所、事実のようです。

にもかかわらず、多くのカップルが4年で別れることなく長年連れ添っています。

彼らの脳内では「エンドルフィン」の分泌は低レベルではありますが、持続しているようです。

なぜ、エンドルフィンが子育てを終わってもなお分泌されるのでしょうか。

 

博士は「相手の存在が自分の利益につながる場合」に、この関係は維持されやすいと考えています。

男性にとって、快適な住環境が手に入ることや、「俺のワイフの料理は世界一さ!」といった条件は好ましい。

女性にとって、安定した収入を得られることや、「記念日の"特別な"贈り物」といった条件は好ましい。

 

残念ながら、このパターンに当てはまることの少ないカップル(夫婦が共に高学歴、高収入で多忙)では、離婚率が高いようです。

男性は、自由になるお金があると浮気しがちで

女性は、収入があると自分で生活できる自負があり

そのどちらの要素も、長い生活で互いの尊敬が薄れる要因になると考えられています。

 

一方で高学歴高収入カップルに限らず、すべての夫婦で共通して「エンドルフィン」が分泌されているのは…

「二人で共通の目標を達成するために協力している関係」

なのだそうです。
大抵の場合は子育てが二人の共通の目標になりますね。

子育て終了後では、お金を出してもらうとか食事を作ってもらうというといった関係よりも、二人で小さなお店を経営するとか、二人でトライアスロンを始める、といった関係のほうが愛情は深いようです。

こうした関係は、一般に「愛」といって差し支えないとは思いますが、研究者たちは便宜的に、「愛着」もしくは「情」と定義しています。

 

 

「生殖機能の盛んな若いうちは「情」という感情が理解しにくく、激しい恋愛が至上のものと捕らえがちです。若いカップルが、これは「愛じゃない」などといって破局するのは、20年30年といった付き合いを経験出来ない若者には仕方のないことかも知れません。しかし「情」もまた愛の大切な要素なのです。」と博士は語っています。

 

 

出勤、帰宅、食事に片付け、掃除にゴミ出し、等々。

ともすれば単調になりがちな生活で、二人で共通の夢を追うっていうのは、小さな成功であっても、いや、失敗であったとしても、すべての思い出が二人の絆を深めるのでしょうね。

小さな成功を祝って、力を合わせて作り上げた家で、二人でささやかに乾杯。

幸せな夫婦像に思えます。



今日はここまで。
次回、長い付き合いで生じる「すれ違い」の解消の仕方を解説いたします。